器物文様|文様は道具に描かれ、道具も文様となる

目次

器物きぶつ文様とは

文様のモチーフは様々です。
松・桜・竹などの植物。
鶴・鹿・蝶などの動物。
雲・波・星などの自然。
そして、道具。
この道具をモチーフにした文様を「器物きぶつ文様」と呼びます。
器物きぶつ文様には楽しいものがたくさん。
身近な道具が文様となり、そこには様々な願いが込められています。

乗り物の文様 

車文様

車文様
平安時代の貴族の乗り物、牛車ぎっしゃ御所車ごしょぐるま」。
その車輪が文様になりました。

車輪は くるくると回り続けることから、「どこまでも回って発展するように」という願いが込められています。

船文様 —— 帆掛ほかけ船と宝船

帆掛ほかけ船文様
島国の日本にとって、人や物を運ぶ船は大切な道具。
帆にいっぱいの風を受けて大海へと進む船に、新しい門出を祝う気持ちが重ねられました。
帆掛け船の文様には、順調に物事が進むようにという意味から「一帆風順いっぽんふうじゅん」「順風満帆じゅんぷうまんぽ」の願いが込められています。

室町時代には、大晦日おおみそかの夜に船の絵を枕の下に敷いて寝る風習がありました。
一年間のけがれを船で運んでもらうための「おはらい」でした。
宝船文様
七福神や米俵や宝石など、宝物を乗せた船の文様を「宝船文様」と呼びます。
江戸時代には1月2日に、宝船の絵に「永き世の…(船の絵の下)」と書いて枕の下に敷いて寝ました。
その夜 吉夢きちむを見ると、その年は幸せな年になるという言い伝えがありました。
船が幸せを運んでくれると考えられていたのです。
「永き世の とおねぶりの みな目ざめ 波乗り船の 音のよきかな」
始めから読んでも終わりから読んでも同じ「回文」です。

いかだ文様

いかだ文様
いかだは、竹などの木を並べてしばった簡易舟のことです。
川を下って木材を運んでいました。
いかだに花を散らしたいきな文様を「花筏はないかだ文様」と呼びます。
川の流れのままに進むいかだ
やがては散ってしまう花。
ともに無常感を込めた、はかないゆえに美しい文様です。
文様には、よごれを払う「きよめ」と言う意味があります。

楽器の文様 

つづみ文様

つづみ文様

つづみは、能楽のうがくに使われる古典的な打楽器です。
真ん中のくびれ、赤いひもが特徴です。

つづみは神様に奉納ほうのうするための芸能、そして、その文様は神仏加護を祈る意味がありました。
また、「大きな音が鳴る」ことが「大きな実がなる」に通じ、豊作を願う文様ともなりました。

琴柱ことじ文様

琴柱ことじ文様
琴柱ことじとは、琴の弦を支えて音の高低を調節する道具のことです。

形の面白さから文様となりました。
技芸上達の願いが込められています。

鈴文様

鈴文様
かつて、鈴は楽器でした。
巫女みこまいう時に 手に持ち鳴らす「神楽かぐら鈴」には、魔除けの力があるとされています。
また、神社の拝殿に取り付けてある大きな鈴には、神様を招く力があるとされています。
鈴文様には「邪気をはらい・神を招き加護かごを受ける」という願いが込められているのです。

玩具の文様 

独楽こま文様

独楽こま文様
独楽こま」はクルクルとよく回ることから、武家の時代には、「子供の頭の回転が良くなり、早く独り立ちするように」との願いが文様に込められていました。

現代では、「仕事回りやお金回りも良くなるように」とたくされています。

まり文様

まり文様
いにしえより遊び道具や飾り物として、女の子たちに親しまれてきた手毬てまり
綿や おがくず や鈴などを芯にして、周りを糸で幾重にも巻いて作ります。
巻き方によって、菊や麻の葉など美しい模様が浮かび上がるそうです。
物事が円満におさまるようにと願いが込められている文様です。
魔除けの意味もあります。

生活の道具の文様

赤鳥あかとり文様

赤鳥あかとり文様

今川義元の旗紋として有名な「赤鳥あかとり」です。
漢字では「赤い鳥」と書きますが、実際には「あか取り」。
女性のくしあかをとる道具なのです。
今川家が この様に変わった紋を使う きっかけとなる不思議な出来事は…?
詳しくは、こちらをご覧ください。

おうぎ文様

おうぎ文様
日本で独自に発展してきたおうぎ
平安時代、高貴な女性たちに愛用され、顔を隠すための道具として使われました。
扇の開いた形は末広がりの形。
繁栄の吉祥文様です。
扇に貼ってある紙、地紙じがみの模様に 他の文様を描けば、二重、三重の めでたい文様となります。

熨斗のし文様

熨斗のし文様
あわびの身を切って薄く伸ばし、乾燥させたものを「のしあわび」と言います。
古来、あわびは貴重で栄養価が高く、不老不死の妙薬として、神前の儀式のお供物そなえものに使われていました。
やがて「のしあわび」を贈り物に添える習慣が、現在の「熨斗のし」へと受け継がれ、水引みずひきの横に描かれたり、紙で作ったものが使われるようになりました。

熨斗のし文様」は、細い帯を数枚束ね中央を結んだ 華やかな図柄。
おめでたい吉祥文様です。

武士の道具の文様

くつわ文様

くつわ文様
くつわとは馬の口につける金具のことです。
くつわの他にも、馬蹄ばてい(ひづめにつけるU字型の金具)やくらあぶみなど、多くの馬具が文様になりました。
武士たちは、これらの文様に出世栄達の願いを込め、好んで使っていました。

くつわ文様は、丸に十の字の形が「十字架クロス」に似ていることから、隠れキリシタンとの関係が語られることもあります。

矢羽根やばね文様

矢羽根やばね文様
この よく目にするいきな図柄は、矢の羽根の文様です。
お正月に神社で破魔矢はまやが売られているのは、矢には魔除けの力があると信じられているから。

矢は真っ直ぐ飛んで射抜くため、武芸上達・門出の祝い・恋愛成就など、様々な願いの込められた文様となりました。
着物の柄によく見られる「矢絣やがすり文」は、矢羽根を並べた連続文です。

仏教の文様

宝尽たからづくし文様

宝尽たからづくし文様
仏教の伝来と共に、仏像や経典きょうてんを通じて日本に広まった文様があります。
それらを集めて、一つの文様としたのが「宝尽たからづくし文様」です。
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宝珠(ほうじゅ)宝巻(ほうかん)打出(うちで)の小槌(こづち)金嚢(きんのう)
願いが叶う知恵を授かる願いが叶うお金が貯まる
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隠れ蓑(みの)(かぎ)丁子(ちょうじ)七宝(しっぽう)
災難を避ける宝物を守る健康金,銀,瑪瑙(めのう)
珊瑚(さんご),玻璃(はり)
硨磲(しゃこ),瑠璃(るり)
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