諏訪大社「梶の葉紋」|梶の葉は、星に願いを届ける舟

諏訪大社 上社・本宮と、その神紋である「梶の葉紋」
諏訪大社 と 梶の葉紋
目次

諏訪大社すわたいしゃ

水眼すいがの清らかな流れ

そこだけが違う…
なんと表現すればよいのでしょうか。
清澄せいちょう静謐せいひつ清浄せいじょう
まるで天からの力をたたええ流れているような せせらぎ。
そのかたわらに、諏訪すわ大社・前宮まえみやの本殿がしずまっています。
せせらぎは「名水・水眼すいがの清流」と呼ばれ、古くからご神水として大切にされてきました。
山腹から湧き出て1kmを流れてきた水は、一年中温度も量も変わらないそうです。

特別な湖

霧ヶ峰、八ヶ岳、南・中央アルプスなど、名だたる山に囲まれた諏訪すわ湖は、神聖な湖としてあがめられてきました。
高台にある立石たていし公園からは諏訪湖を一望でき、映画「君の名は」のモデルの地にもなりました。

湖を挟んで、諏訪大社の四つのやしろ鎮座ちんざしています。
湖の南には上社かみしゃである本宮ほんみや前宮まえみや、北には下社しもしゃである春宮と秋宮があります。
諏訪大社の社殿の多くが国指定の重要文化財です。

最も古い神社

日本には8万社の神社が登録されていますが、その中でも最も古い神社の一つとされるのが、この諏訪大社。
創建そうけんは『古事記』の国譲くにゆずりの神話とされる、長い歴史を持つ神社です。
主な御祭神ごさいじんは、上社の本宮は「建御名方神たけみなかたのかみ」、大国主命おおくにぬしのみことの次男の神様です。
上社の前宮、下社の秋宮と春宮は「八坂刀売神やさかとめのかみ」、建御名方神たけみなかたのかみの妻の神様です。
御神徳ごしんとくは、雨風や水害の守護、狩猟・農業・航海など生活の源の守護、そして戦の守護まで、とても幅広いです。
写真 上宮・本宮の参拝所

神様は諏訪湖へ逃げる

このような神話が残されています。
大国主命おおくにぬしのみことは土地を開拓し、稲作を広め、人々が暮らしやすい豊かな国を築きました。
天照大神あまてらすおおみかみは、そのさかえた国は自らの子孫が治めるべきと考え、大国主命おおくにぬしのみことに国を譲るよう伝えます。
しかし、話し合いは何年経っても思うように進みません。
そこで、天照大神あまてらすおおみかみは最強の武神・建御雷神たけみかづちのかみを派遣しました。
建御雷神たけみかづちのかみは出雲の浜に降り立つと、剣を逆さに海へ突き立て、その刃先に胡座あぐらをかいて座りました。
大国主命おおくにぬしのみことは「私一人では決められません。息子たちの考えを聞いてください」と答えます。
長男・事代主神ことしろぬしのかみは国譲りを受け入れ、海へ姿を隠しました。
次男・建御名方神たけみなかたのかみ建御雷神たけみかづちのかみに力比べをいどみます。
しかし相手は最強の武神。
建御名方神たけみなかたのかみは敗れ、信濃しなの国の諏訪すわまで逃れ、その地から出ないことを誓ったのです。
こうして、大国主命おおくにぬしのみこと天照大神あまてらすおおみかみの孫に国を譲りました。

こちらでも国譲りの話を説明しています

それぞれの御神体ごしんたい

諏訪大社四社のうち本殿があるのは、上社の前宮まえみやのみです。
他の社は本殿の代わりに、自然そのものを御神体ごしんたいとしてまつっています。
上社の本宮は社殿背後にある「御山みやま」、下社は境内の樹齢の長い「御神木ごしんぼく」—— 春宮は杉・秋宮はイチイの木です。

因みに、前宮という名は、本宮より前に創られたという意味です。
写真 上社・前宮 本殿

不思議な四本の長い柱


諏訪大社のすべての境内には、長い柱が不思議な存在感をもって立っています。
御柱おんばしら」と呼ばれ、社殿の四隅に建てられています。
それは、神様の領域を区切り、神様をお迎えするための依代よりしろです。

伊勢神宮では社殿を新しく建て直す「式年遷宮しきねんせんぐう」が行われますが、これには莫大な費用と労力がかかります。
諏訪大社では社殿の代わりに、この「御柱おんばしら」を6年目ごとに建て替えています。
式年造営御柱大祭しきねんぞうえいみはしらたいさい御柱祭おんばしらさい)」というお祭りの儀式を経て、新しい約19mもの長い木が建てられます。
神域を新たな力で満たすために。

式年造営御柱大祭しきねんぞうえいみはしらたいさい」の様子は、こちらの諏訪大社のホームページで詳しく見ることができます。
写真 上社・本宮 一の御柱

かじの葉文様

諏訪大社の神紋は「かじの葉紋」です。
梶の木は落葉高木で、樹の皮は和紙の原料として重宝されていました。
大きな葉は神事に使われ、梶は神聖な木として尊ばれました。
そのため、諏訪大社では神紋として用いています。

梶の葉は、七夕の短冊のルーツ

かじの葉文様
諏訪大社・上社の本宮と前宮の神紋「梶の葉紋」
特徴的な形のかじの葉。
神様へのお供え物を載せる葉として使われてきました。

平安時代の宮中や貴族の間で行われた七夕の行事に「乞巧奠きこうでん」があります。
織姫おりひめにあやかり裁縫や詩歌、書道が上達しますようにと願う儀式でした。
七夕の夜、里芋の葉に溜まった露を「天の川の雫」に見立て、その露を集めて墨をすり、梶の葉の裏に和歌や願い事を書いて、星に手向たむけました。
梶の葉に願いを書く風習は、江戸時代になると紙の短冊へと変わり、笹の木に飾られるようになりました。

梶の葉の文様には、「神仏の加護」「学業成就じょうじゅ」「心願成就」の意味があります。
諏訪大社では、上社と下社と同じ「梶の葉紋」ですが、形が少し違っています。

上社は根が4本、下社は5本となっています。

諏訪大社の不思議

寝入ねいりの杉

下社・秋宮の境内に、樹齢は600年とも700年とも言われる大きな杉の御神木ごしんぼくが立っています。

さて、この杉は、丑三うしみつ時(真夜中)になると枝を下げて眠りにつき、いびきまで聞こえてくるとか。
夜泣きをする子には、この杉の小枝を煎じて飲ませれば夜泣きが止まる、と言い伝えられています。

鹿の耳が…

上社・前宮に長い廊下のような建物「十間廊じっけんろう」があります。
昔は、「御頭祭おんとうさい」の神事の際、十間廊に75頭もの鹿の頭がお供物として捧げられていました。
不思議なことは、その中の1頭の耳が、必ずけていたとか。
神様が印を付けられたのでは、と伝えられています。

神様の氷の足跡 —— 諏訪湖の御神渡おみわた

てつくほどの寒い冬の諏訪湖。
湖面の氷が盛り上がり、まるで湖を横切るように氷の筋が現れます。
「諏訪湖の御神渡おみわたり」と呼ばれています。

上社にいらっしゃる建御名方神たけみなかたのかみが、下社にいらっしゃる妻の八坂刀売神やさかとめのかみのもとへ通われた道筋だとか。
(最近は温暖化の影響で、この神秘的な現象はほとんど見られないそうです)
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